このニュースレターでは、ARUNの活動や社会的投資について解説しています。
読者は、社会的投資に興味がある方や、カンボジアに興味がある方など様々です。
「途上国と私たちをつなぐ社会的投資」について一緒に考えていきましょう!
ARUN Newsletter No.5 2011年7月号 (7月13日発行)
INDEX ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
<1> 巻頭言 代表 功能能子
<2> 投資先は今!
<3> 【特集】ARUN流BOPビジネスへの挑戦―カンボジアで本格調査スタート
<4> 今月の予定 ―サハクレアセダック代表が来日で勉強会―
<5> 編集後記
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<1> 巻頭言
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いつもARUNを応援いただき、ありがとうございます。
ARUNは2009年にSocial Investment Fund for Cambodiaとしてスタート。
日本発のグローバルな社会的投資プラットフォームの構築を
目指しています。現在は、カンボジアの社会起業家への投資を
行っています。今日はカンボジアのことを少し書きたいと思います。
先月末からポル・ポト派政権の元幹部たちをさばくカンボジア
特別法廷が首都プノンペンで開かれています。カンボジア特別法廷とは、
ポル・ポト派政権(1975-79年)が共産主義をかかげて自国民170万人
(推定)を死に至らしめた、人道に対する罪と戦争犯罪を裁くものです。
特別法廷は、国連の支援を受けて、カンボジア人と外国人の
検察官や裁判官で構成される、カンボジアの国内法廷として設立されています。
日本は、法廷運営予算の半分近くを負担しており、日本人の判事も参加しています。
昨年の法廷では、カン・ケ・イウ元トゥールスレン収容所所長(68)に
有罪判決がくだされました。今年はいよいよ政権の最高幹部の審理が始まろうと
しています。ポル・ポト元首相、タ・モック元軍参謀長・最高司令官はすでに
死亡しているため残った4名、ヌオン・チア元人民代表会議議長(84)、
イエン・サリ元副首相(85)、その妻のイエン・チリト元社会問題相(79)、
キュー・サムファン元幹部会議長(79)が対象です。しかし、6月末の初公判では
被告が「法廷は不公正」「健康上の理由」などによる途中退廷や、
(イエン・サリ元副首相が過去に有罪判決と恩赦を受けていることから)
「裁判の正当性」をめぐって弁護側と検察側が対立するなど、一筋縄では
いかない難しさに直面しています。
裁判においては、ポル・ポト政権崩壊後30年以上たっているため、
証人を含めて関係者が高齢化していることが大きな課題です。もう少し早く
実現していればという声もありますが、辛いポル・ポト時代の記憶を抱える
カンボジア人の間でも、以前は裁判を望まない人の方が多かったかもしれません。
1990年代後半までは平和を実感できず、再び戦争状態に陥るのではないかという
不安があったからです。
長年の平和構築と貧困削減のための努力と、政治的な安定の元、ようやく
実現した特別法廷。裁判の重責を担う人々と、その行方を静かに見守る
カンボジアの人々。他方、経済成長に沸き、今月中旬には初のカンボジア
証券取引所が開設されるなど、歴史の転換点にあるカンボジア。私たちも
人々が笑顔で暮らせる社会をつくるために何ができるかを考え、カンボジアを
注視していきたいと思います。
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<2> 投資先は今!
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ARUNは現在、カンボジアの農業関連企業サハクレアセダックと
かつら製造のアルジュニに投資しています。サハクレアセダックでは
現在、大構造改革の真っただ中、今月来日するラン・センホン代表に
構造改革の内容を伺い来月のニュースレターで報告する予定です。
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<3>【特集】ARUN流BOPビジネスへの挑戦―カンボジアで本格調査スタート
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今年度から2年間、ARUN過去最大規模のカンボジアでの国際協力機構(JICA)
との共同プロジェクトが始まりました。JICAの「BOPビジネス連携促進調査事業」の
一つに採択されたARUNのプロジェクトには、どんな願いが込められているの
でしょうか。アシスタントプロジェクトマネージャーでカンボジアと日本を
行き来する日々の小野真依パートナーに全貌を聞きました。
QまずJICAのBOPビジネス連携促進調査事業とは?
人口減少で高齢化が進む日本企業の多くが成長市場を求めて、
ベース・オブ・ピラミッド(BOP)と呼ばれる発展途上国の人々を対象にビジネス
展開できないか関心を高めています。一方で開発援助の議論においても、
より効果的な貧困削減へのアプローチとしての官民連携に着目が集まっています。
本案件はJICAがBOPビジネスとの連携を促進するため、事前調査を費用面などで
支援する仕組みとして昨年から開始されたものです。
Q約5倍の難関をくぐり抜け採択された20件を見るとBOPビジネスとして有名な
住友化学の蚊帳や三洋電機のソーラーランタンと共にARUNが選ばれたのですね。
選ばれた団体の殆どは大企業で、そうでない事例はARUNの1件のみだった
ようです。ARUNのプロジェクトではBOPビジネスを促進する新しい手法としての
社会的投資の実現可能性を調査します。その事例研究として、単にモノを売るだけ
でなくサプライチェーンそのものについての調査も行います。こうした企画設計も
異質との評価を頂いています。
Qサプライチェーンの調査とは、どんな意味なのでしょうか。
ARUNはBOPビジネスを単に途上国人々を購買対象にしたビジネスと考えるの
ではなくBOPの人たち自身が営むビジネスと広義に考えています。そこでサプライ
チェーン全体を考えてみようということになりました。
Q具体的には、天然ハチミツ事業について調査を始めたそうだが。
ARUNが行う社会的投資がうまくいくためには投資対象事業のバリューアップを
図る必要があります。そのより良い手法を検討するために、地元生産組合による
天然ハチミツ事業を事例に取り上げることにしました。これはARUNだけでできる
作業ではないので、日本・カンボジアの企業やNPOと連携し調査をしています。
例えば春日養蜂場や東亜化成、NPOみつばち百花、現地の環境NPO
であるNTFP-EP、またARUNの主要投資先でもあるサハクレアセダックの協力を
得ています。
Qそれぞれの役割は?
みつばち百花には現存資源量の評価、春日養蜂場にはハチミツの
品質向上や持続可能な採集手法の指導、東亜化成にはハチミツの副産物である蜜蝋を
化粧品や食品に使えないかという付加価値化の可能性、そしてサハクレアセダック
とはカンボジア国内市場でのマーケティング調査を進める予定です。
Q小野さんは既にカンボジアの産地を回っているのですね。
天然のハチミツを扱うため、養蜂と異なり年中採蜜が出来ません。多くの産地で
乾季(春)にハチミツを採ります。これに併せ過去3か月で4つの産地に
足を運びました。多くのハチミツハンターは農家で、副収入としてハチミツ採集を
しています。森で予め目をつけておいた蜂の巣が大きくなると採集し、地元
トレーダーに売って現金化するのです。この方式だとかなり買いたたかれて
しまいますが、全国レベルの生産者組合を強化すればより高く安定した価格で
ハチミツを売ることができます。生産者組合は蜂を殺さない持続可能な採集方法の
普及に努めており森にやさしい天然ハチミツのナショナルブランド形成を
目指しています。
Q現地ではWWFのような環境団体も活動しているそうですね。
各産地で、生産者組合の運営は様々な地元NGOとの連携によって大きく支えられて
います。WWFは、経済土地コンセッションが進むモンドルキリ州で特にエコツーリズム
分野の支援を続けられており、天然ハチミツ事業についても豊かな森の持続的活用
による事業を軌道に乗せることでよりプロアクティブな環境保護へのアプローチを
図っています。ただ「開発は駄目だ」と押し付けるのでなく前向きな対案が出せな
ければいけないという考え方には学ぶことが多いです。今月からは社会的投資
そのものの実現可能性調査も本格的に始める予定です。
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<4> 今月の予定 ―サハクレアセダック代表来日で勉強会 ―
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今月の勉強会では、ARUNの主要投資先であるサハクレアセダックの
ラン・センホン代表を招いてサハクレアセダックの現状や将来の可能性について
お話ししてもらいます。
サハクリアセダックは、カンボジアの農業・農村開発に取り組む現地NGO、セダック
の事業部門から設立された社会的企業です。サハクリアセダックは、現地の小規模生産
者と連携して、安心かつ美味しい農作物の加工、流通、販売を行っています。
ぜひご参加ください!
29日(金) ARUN勉強会
途上国へのソーシャルファイナンス
~ カンボジア 農業・食品産業への投資事例 ~
■日時:2011年7月29日(金) 19時
18:30~ : 受付
19:00~ : ARUN, LLC の紹介(功能)
19:15~ : カンボジアの農業・食品産業の可能性と現地の食品企業(丸山)
19:30~ : サハクレアセダックの事業と挑戦(ラン・センホン氏、通訳付)
20:15~ : パネルディスカッション(功能、丸山、ラン・センホン氏、通訳付)
パネリスト間で質問をしあうだけでなく、また会場からの質問に対してパネリストが
議論をする機会もあります。
※イベントの内容は、一部変更になる場合があります。ご了承ください。
※途中参加・退席は自由です。
■会場: JICA 地球ひろば 301号室
地図
■参加費: 1,000円
■お申し込み方法
お手数ですが、7月28日(木)までに以下のサイトにアクセスし、必要事項をご記入ください。
http://bit.ly/qbXxlT
■プログラム詳細は、ARUNホームページでもご紹介しています。
http://bit.ly/hV0aqA
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【5】 編集後記 広報チーム
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ARUNが全力で取り組んでいる天然ハチミツ事業についてようやく
ニュースレターで紹介することができました。国内でも販路を作ることが
できないか模索の日々、ぜひアイデアをお寄せください。事業には色んな方々が
関わっているのでニュースレターでも様々な角度から進捗状況をお伝えしていく
予定です。
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ARUN Newsletter No.5 2011年7月号 (7月13日発行)
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【発行】 ARUN合同会社(ARUN,LLC.)
【編集】 広報チーム
【WEB】 www.arunllc.com
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