【連載第5回】社会的投資、インパクトインベストメントの「成功」の基準とは?

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津崎たから

これまでの連載では、ARUNの社会性のモニタリングや評価の方法、実施時の流れ、指標となる項目の策定について紹介し、さらに前回(第4回)は、「指標項目において高い数値が確認されればそれはよい投資であったと言えるか」という疑問について書きました。

さて、更新のインターバルがちょっと空いてしまいましたが、その間、5月初旬にカンボジアの投資先企業3社を訪問し、投資事業の事業面・社会面・環境面のモニタリングを行ってきました。今回はその報告を交えながら、現地で感じた大事な視点についてご紹介したいと思います。

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ARUNでは、モニタリング&評価の際、ビジネスの成長やインパクトを表す定量データ、定性データの両方を重視し、定期的にモニタリングを行っています。事前に合意した指標項目について、投資先企業の担当者からARUNカンボジアオフィスにデータで報告を受ける場合もありますし、節目には日本から現地へ出向いた際に経営者とのインタビューを行ったり、参加型モニタリング&評価(Participatory Monitoring and Evaluation)を行ったりします。

今回のカンボジア訪問では、2014年中に完済予定の企業の経営者とのワークショップ形式のインタビューを行いました。経営者はもちろん、雇用されているスタッフや外部のサプライヤー等のステークホルダー約10名にもヒアリングを行いました。経営者からは創業時から現在に至までの企業の変遷、苦労話、人材育成の考え方、ブランディング戦略、10年後のビジョン、自国の若者への想いなどについて話を伺う事ができました。

また、今年に入って投資を開始した企業2社とは、社会性に関する具体的な指標項目、データの取得方法や計算方法について話し合いを行いました。具体的には理想と現実の両方を見据えながら、いつ、誰が、何をするのか、不明な点があれば誰に問い合わせるのか、国や州ごとに関連の統計データを取得することは可能か、実行するための人はいるか、どんな支援が必要か等、できることとできないことを早い段階で確認します。もちろん投資検討期間中から何度もコミュニケーションを重ねますが、実際に顔を合わせることでお互いの考え方を真摯に理解し、これから長い付き合いとなる投資先の方とコミュニケーションの土台を構築することはとても重要だと再認識しました。

こうしたディスカッションを通じて、今回改めて投資先とどのように関係を構築して行くのか、またモニタリング&評価の本来の意味は何か、について考えを深める事ができました。

3つの重要な視点について学ばせていただいて帰国しましたが、今回はその1つ「主語を問う、誰にとっての評価なのかを再考する」について書きたいと思います。

1.「主語」を問う、誰にとっての評価なのかを再考する

投資家が、投資したお金が正しく効果的に使われているかを確認し、客観的視点を持って事業の進捗や投資の効果を評価することは、社会的投資を行う上で大事な視点です。しかし、社会的投資の本当の目的は、社会にとって意味のある事業を展開し、より多くの人の生活の向上を共に目指すことであり、事業資金を提供することはミッションを達成のための一つの手段にすぎません。

近年、社会的投資が世界的に注目されるようになるにつれて、投資によるインパクトを横断的に測定する動きが活発化するのと並行して、投資先に対するモニタリングや評価に過度な負担がかかっていることが課題として上がっています。もちろんモニタリング&評価は重要なのですが、そもそも「誰のための評価なのか」とう問いにも焦点が当たってきており、欧米アジアの至る所で議論が繰り広げられています。

また、従来型の「投資によってどれだれインパクトを創出できたか」という結果追求型ではなく、誰が、どこで、どんな考えを持ち、どんな行動をとったことで、具体的な成果に結びついたのかというプロセスに着目する動きが最近広がってきています。(この一例、PRISM Portfolio Risk, Impact, And Sustainability Measurement については、別の機会に改めてご紹介したいと思います)

今回の経営者とのワークショップでも、成果を生み出すためのプロセスに注目し、誰がどんな想いで戦略を描いているのか、何を成し遂げようとしたのか、彼らの考える成功の定義は何なのか、なぜそう考えるのかをしっかりと聞く事を心がけました。インパクトを測定するための指標として事前に設定した項目や関連データを鵜呑みにするのではなく、インパクトを補完するための材料として捉え、ストーリーの中に散りばめられた数値を成功事例や失敗事例と関連させる形で紐づけていきます。

そうしながらワークショップを進める中で、起業家・事業者は想いが明確であればある程、自分のビジネスの価値やビジョンを自らの言葉で表現し、自分の言葉で社会的インパクト創出を語る傾向が強いということを感じ取りました。しかし、経営者が主観的に自社事業の成果や社会的価値を評価する(また多くの場合、そのように対外からも評価される)ことを望む一方、一般的には投資を行う側は客観性を求め、指標項目や取得データをもって投資の成果を整理し、更にはそれを横並べにして比較できるようにしたいという意図が働きます。これは、単純に立場上や力関係の問題ではなく、また主観性、客観性の善し悪しを議論するということでもなく、既存のモニタリング&評価手法そのものの構成が、更にはその根底にある考え方が「誰にとっての評価なのか」という問いを投げかけているのではと感じます。

というようなことを鑑みつつ、主観性と客観性の間にある様々な変化やストーリーを拾いながら、双方が評価を実施する目的を再確認し、主観的ストーリーと客観的データをバイパスする対話力を磨いていくことが重要だということを深く認識しました。立場の違い、ロジックの違い、使用する言葉の違いをお互いが認識し尊重できたところで、急速にワークショップの内容が深まったのも事実です。最終的には、私達に最も適切な投資終了後のレポートの形態は、一方的に相手を評価する「評価レポート(Evaluation Report)」ではなく、投資を通じてそれぞれが達成できた成果を記す「目標達成レポート(Achievement Report)」に近いのではないかという想いを共有しました。

次回は、2つ目の視点「成果(インパクト)を探すのではなく、成果を見る目を養うこと」について書きたいと思います。

※本文中の「投資」には、融資を含みます。

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