【書評企画】社会的投資を知るための1冊【第4回】

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勝ち組投資家になりたいなら「統計」を読め! 「人口動態」から読む次世代投資
平山賢一(朝日新聞出版、2014)

ARUNパートナー 小笹俊一

投資に関する本は、「帯に短くたすきに長い」本が少なくない。大儲けした人が書くと再現性がない自慢話になる一方、頭でっかちで大枠を示すのが精一杯という本も多い。平山さんの新作は、そのどちらにも飽き足らない読者にご満足いただけるボリュームたっぷりの好著だ。速水融さんに啓発された人口学の最新の知見とシュンペーターばりのイノベーションへのアプローチから、読み手の一人一人が自分だけのセルフポートフォリオを作るための企業を見つけられるヒント満載である。

2001年、処女作「金利史観」を著した頃からのお付き合いである立場から見ると、平山さんの脳は、すさまじい成長を続けている。当時、債券ストラテジストだった著者はその後、株式にも投資対象を広げ今や世界株式ファンドマネージャー。いつしか毎年、米国で農業団体の会合に参加しトレンドをおさえるまでのコモディティ通になり、実生活では炭水化物ダイエットに成功し別人のようにかっこよくなってしまった。

本作には、こうして平山さんが脳だけでなく肌感覚、糖質制限感覚で獲得した見方が38個、披露されている。例えば「企業選択のヒント4」には、こうある。「今後、炭水化物に依存した食生活を営むことをやめるわけにはいかないだろう。そのため、健やかな健康生活を営むには血糖値を適正範囲内で安定化させていくことに注意を払っていく必要がある。(略)それだけに生活習慣の改善や初期治療、多様な生活環境に応じた『糖尿病対策』の提供は、次世代型の産業として注目されることになる」。

自らの糖質制限ダイエット経験を昇華させ概念化する様に、自らの失恋話を歌にするミュージシャン以上のプロフェッショナリズムを感じ脱帽する。今や平山ワールドは、金利、株価のみならず血糖値の変動幅(ボラティリティ)にまで思いを馳せるフェイズに突入しているのである。

ただ私のように欲深い読者の「結局、何の株、買えばいいの」的な質問に、筆者は意図的に答えていない。「人の意見を傾聴した上で自らの解を出していくことで長期的にぶれることのない投資姿勢を貫けることになる」。そうか、究極的に問われているのは私のボラティリティなのだ(笑)

株式投資をイメージして書かれた本ではあるが多様な資本家が長期にわたり安定したマネーを提供することで企業のイノベーションを促すという著者の主張は、昨今のソーシャルファイナンスの考えとも、ぴったり重なる。世界の人口成長率は45年前にピークアウトしているという驚愕の人口本でもあり色んな楽しみ方ができる。

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