【連載第4回】社会的投資、インパクトインベストメントの「成功」の基準とは?

046_25022014_chea-nol-12

第1回はこちらから
第2回はこちらから
第3回はこちらから

第4回は、社会的投資の「成功」とは具体的にどういう状態のことを言うのか、何を持って「成功」と判断するのかについて考えてみたい。
前回、ARUNの投資事業の社会性に関するモニタリングと評価の方法、実施時の流れ、指標となる項目について紹介したが、では「それぞれの項目について、高い数値が確認されれば、それはよい投資案件だったと言えるか?」というと、そう単純なものではない、というのが私達の経験から導き出される答えである。

ARUNの投資の最大の目的は、投資先事業の背景やその意義に立ち返り、起業家が事業を通じて社会にどんな変化をもたらそうとしているかを深く理解し、投資という形でそのチャレンジを共にする事である。よって、社会性評価枠組みの特徴は、起業家もしくはBOP事業そのものの目的を評価枠組みの設計基盤とおき、案件毎にモニタリング指標を設定する、という手法にある。しかし、何を社会的成果と感じるかは、その受け手が何を期待しているかによって異なり、主観性と客観性の両方をバランスよく取り入れる方法を模索してきた。ARUNがスタートして5年目になり、投資先の経営力やセクター毎に異なる様々な状況等への理解度が増し、対応能力も蓄積できた。こうした経験を踏まえた上で、この主観性と客観性のバランスを取り入れながら、モニタリングや評価を行う事ができるようになってきた。

途上国のBOPビジネスは往々にして人材不足、技術力向上機会の不足等、ビジネスを行う上でも選択肢が限られた状況で日々の事業決断を迫られる。それに合わせて、ARUNの社会性評価モニタリング枠組みは、柔軟でなくてはならない、ということもこれまでの経験から学んだ事の1つだ。投資先企業がやむなく事業計画の調整を余儀なくされた場合に、既存の指標に固執するのではなく、原点に立ち返り、起業家が当事者自身の参照指標として継続して活用したり、軌道修正できる余白があることが重要だ。また社会的成果を期待するあまり、多くの指標を策定することを起業家に望む一方、それが経営負担を強いている場合もある。そんな中、「べき論」に縛られず、絶対に譲れないポイントは何か、本当に大切な指標項目はどれかを明確にする重要性もお互いの関係性の中で学んだことである。

冒頭の「指標項目について、高い数値が確認されれば、それはよい投資案件か?」という問いには少なくとも2つの疑問がある。

1つ目は、定量データの捉え方から見える社会的効果についてである。ARUNに限らず社会的投資やインパクト投資の現場では「雇用された人数が増えている」、「農村部へのリーチが増えた」など定量データから事業の社会性効果を測定する場合が多いが、多くの場合、物事を断片的にしか捉えられないことが多い。例えば、ある月に雇用が激増したが、半年後に継続して雇用され続けているか、解雇されたかが見えなければ、効果は分からない。また、雇用者数に注力しすぎたがために、固定費が膨らんで経営難に陥るという場合もある。

2つ目に、インプットからインパクトに至までの時間的関係である。社会的投資の成功を実感するには時間を要する場合があるという認識を持つ事が大事だと感じる。例えば、ARUNの投資を受けて、非電化地域に電力が導入される場合、投資直後に劇的に彼らの生活が改善する訳ではない。日常の様々な問題が徐々に解決され、身の回りから小さな変化が生まれ、その小さな変化の積み重なりが徐々に時間をかけて家庭や地域に経済的、社会的効果をもたらす。また、これらの変化が彼らの生活にどれほどの意味を持つのか(インパクトの深さ)を実感するには、数年、もしくは数十年かかるかも知れない。もちろん、現場でその兆しや可能性を十分に感じ、こつこつと定性、定量データを蓄積するという努力を行っている。

【参考】
ARUNでは、この連載のような内容を少人数で学ぶ機会を2時間×3回のスクール形式で開催しています。第1回『ソーシャル「インベストメント?」スクール』(2014年2月5日/12日/19日 19:00-21:00 開催)は終了しました。第2期以降の情報は随時公開の予定です。ご関心ある方の参加をお待ちしています。

2017年8月
« 8月    
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031  

follow us in feedly