パネル討論と金融史考察で見えた突飛なARUNビジネルモデル

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※国際シンポジウムのパネルディスカッション「社会起業家を支える新しいエコシステム」(10/12)でコーディネーターを務めていただいた、ARUNパートナーの小笹俊一さんにエッセイをいただきました。国際シンポジウムに関する記事はパートナーズエッセー(「第2回ソーシャル・インベストメント国際シンポジウム」の報告と感想 鈴木千枝)も併せてご覧ください。

インドのマイクロファイナンスでずっと気になっている話があった。
マイクロファイナンスから借りた金が返せず自殺をする人がいるという
3年前のインドのマイクロファイナンスのニュースだ。

インドからのパネリストらによれば、
結局、州政府が乗り出してきて規制を強化したことで
事態は収束し、インドで上場しているマイクロファイナンス機関
SKSマイクロファイナンスも上場を維持しているのだという。

こういう話を聞くと、かつてマイクロファイナンス先進国だった日本が
過払い金を過去にさかのぼって請求できるという制度によって、
一気に衰退産業となった歴史と対比したくなる。

今や大きいところではアイフルだけになってしまったが
2000年位まで日本では数多くのマイクロファイナンス機関が上場していた。
外国人投資家が大好きな銘柄だったことや、オーナーたちの住居が
ものすごい豪邸だったことを思い出すと利益配分があまりにも
株主重視だったことは問題なのだろう。
ただ貸倒比率の正確に予測する金融機関としての器はかなり秀逸であった。

アコム、プロミスは個人向け小口金融の優等生で、
銀行にもスコアリングモデルのノウハウがないということで
三菱UFJ、三井住友が買収していった。

事業者ローンの日栄やSFCG(商工ファンド)も、
「金返せないなら腎臓売れ」問題ではなはだ評判は悪いが
銀行が貸してくれない事業会社のブリッジローン供給者としての
役割を果たしていたのは確かだ。

金返せなくなった人に厳しく接するというのは、貸し借りの原点と
いわれる紀元前の種もみの貸借の時から、そんなにかわっていないだろう。
ベニスの商人などもその類の話だ。

ただその時の世の中の雰囲気、さらにいえば、
その国に勢いがあるのかどうかという空気から存在意義が判断される。

高度成長期は厳しい取り立てよりも助かっている人の方が多かったので
存在が許されたのだろうし、21世紀に入り成長機会がほとんど見つからない
日本では、恩恵を受ける人よりも厳しい取り立てばかりが目につくようになり、
社会から去勢された。

インドはじめ新興国には、まだ銀行口座を持たない人が大量にいることを
思い出せば、まだ機関が存在することのマイクロファイナンス機関が存在する
意味のほうが、大きく改めてインドにまだまだ成長余地がある実感をさせる
ものだ。
ミャンマーからのパネリストには、これまでの中国などの投資が
あまりにも搾取的に映るようで、かれらはかれらで労働者分配重視型の
投資を求めていた。
さて、器としてのマイクロファイナンスノウハウはしっかりもっているものの、
利益配分でまだノウハウがない日本、そして利益配分のイメージは持っている
ものの、持続的に組織が維持できるビジネスモデルがまだ作れていないARUNは
こうした需要にどう応えられるのか。

「フラット化する世界」を目の当たりにしている日本人は、どんどん所得が
減っている。アベノミクスが頑張ったとしても、フラット化に根本から
抗するのは難しく、「寄付しますよ」とも言えなくなってきた。
少なくとも日本の物価連動債を上回る位のリターンがないと日本人も
需要に応えるのは難しい時代になった。

会場から質問してくださった方も、寄付目線ではない。
「どのくらいリターンが出るものですか」とか
「格付けとってくれないとファイナンシャルアドバイザーが
売れない」という質問をいただいた。

思い起こせばトリプルAの格付けをとっていても思い切りこけたのが
サブプライムローンであったことを思えば、優良格付けがついていても
失敗する商品があるのが魑魅魍魎とした金融の世界である。

と考えていくと
やっぱりエクイティ投資なんではないだろうか。ただ、
ベンチャーキャピタル投資は100社中3社が上場すれば
成功というのだから、ARUNの今の資金規模ではリスクがとれない。

となると、当座は上場しているSKSマイクロファイナンスの株を買い続ける
ようなスキームもあるのではないか。
幸いにも同社株は2010年の上場以来のピーク時株価と比べれば
10分の1の価格にまで下落している。

カンボジアにしてもミャンマーにしても
まだ株式市場がないのでこの仕組みは使えない。
しかしマイクロファイナンス機関までが上場する
インドであれば、上場企業株式投資と中小零細企業融資の2本立てて
ARUNのビジネスモデルを作れるのではないか。

実はこのモデルの下敷きは日本のマイクロファイナンスにある。
SFCGは、商工ローンバッシングの後、エクイティ投資併用型の
ビジネスモデルに転換を図りつつあったのだがとん挫した。
これをARUNを成し遂げてしまえば大変な偉業ということに
なるのではないか。そんなヒントを感じたパネル討論だった。

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