パートナーズエッセー スタディーツアーを通じて特に強く感じた2つの必要性

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「ARUNの理念を現地企業家に理解してもらう地道な努力」と 「途上国の実情に合った現場主義に基づく種々の工夫」

今回、訪問した企業体並びに組合は、①手作人毛ヘアーエクステンション製作、②地元資本ホテル、③有機米農業の組合(大規模)、④有機米農業の組合(小規模)が既存取引先、⑤無電力地域個別世帯向け自家発電型簡易ソーラーパネル設置、⑥健康植物パウダー製造(小規模)が今後の取引候補先で、計6つ。

この内、①の米国人女性企業家を除く全てのカンボジア人アントレプレナーに共通している彼らのモチベーションは、経済発展の波に乗り各々の分野の市場メカニズムの中で、企業活動を通じて経済的に向上していきたいという意識と感じた。

また、③から⑥は現地の金融機関からの融資を受けるのはそう 簡単ではなく、また、受けられたとしても金利面では相当高くなってしまうが、誰かが資金を提供してくれればビジネスを拡大し利益を得て、より豊かになりたいと思っていると感じた。

こうした状況下で日本からの資金提供者ARUNが、社会的投資の重要な理念である1)、”企業活動そのものにエコロジーを取り入れた地球環境にやさしい企業。”また2)、”人権を尊びカンボジアの貧困解消に貢献する企業活動。”を普及させてゆくのには、色々な苦労が伴うだろうなと改めて感じた。

また、私の事前認識と現地の実情に、いくつかギャップがあることも分かった。  例えば、大規模農業協同組合だけでなく、小規模農業組合でも海外への販売は盛んに行われていた。エコロジーについては、常に投資家としてリクエストしモニターし続けないと、採算優先が今後一層進み、完全有機・*2無農薬が崩れやしないかと一抹の不安を覚えた。また、地元資本のホテルやソーラー  設置企業へのヒアリングからは、現地での雇用機会の提供が重要課題と考えていた我々に対して、当地では意外にどの階層の労働力についても実際は*3人手不足なのですという声がいくつか聞かれた。

 

*1今回、値段は2.1$/2kgの有機米(玄米)をある店舗で購入し、プノンペンからクアラルンプールまでの1時間半スーツケースに入れて飛行機に預けたところ、2袋共にパッケージのシール部分が数か所破れてお米があふれ出してしまっていた。(実際に焚いて食べてみたところ、味と品質はクアラルンプールの街中レストランで出されるものと比べてもかなり良い。よってパッケージングの仕方が何とも惜しい)一方、ライバル店舗で購入した有機米(白米)は1.5$/kgだが完全真空パッケージになっており、同様に飛行機に預けて運んでも全く問題なかった。なお、クアラルンプールのAEONスーパーでのカンボジアから輸入した有機米(精米)の値段は3$/kgであった。

食の安全が世界的な課題となる中、美味しくて安全なカンボジアの有機米は、外国からの需要があり良い値段で売れるのである。国境を越えた市場メカニズムの競争の中で 生き残ってゆくには、外国人や海外の方が高く買ってくれるという現実に、パッケージや価格も含めて的確に対応して行かなければならないということかと思う。

*2低農薬も含まれるが、今回訪問した2つの農業組合は、完全有機無農薬でやっているとのこと。

*3田舎の貧困農村部を除き大都市や周辺部では経済発展が進む中、実態はこのようである。人口ピラミッドで圧倒的に若者の多いカンボジアでは、NGOによる人材教育も活発化 してきている。

 

また、ARUNの投資先の社会的企業が生み出す社会的インパクトについても、非常に印象深いものがあった。

貧困農村地帯の女性が人身売買に身を投じることなく、長く伸びた自分の髪を①の手作人毛ヘアーエクステンション製作のアントレプレナー企業が買わせてもらうことで、彼女の約半年分の生活費が得られるのである。このアントレ  企業家とそのもとで働く数十人の少女たちの穏やかな表情と澄んだ目の輝きに接した人は、社会的責任投資を紐解く以前に、なんとかこの活動が続くように自分にできることはやらねばと思うのではないだろうか。

⑤の電力無供給地域の農家の建物は、まるで日本のTV番組『ウルルン紀行』に出てくるような素朴な昔の高床式住居である。設置するソーラーパネルも中国製の簡易なもので、1時間もしないうちに屋根に簡単に取り付けられてしまう。この自家発電電力で供給できる電力量では、冷蔵庫やTVやPCといった我々の快適な日常生活を満たすレベルのものは無理である。然しながら、これまでは夜になると真っ暗になってしまうこの家の2つだけある部屋に、明り取り程度かもしれないが初めて電球がついた瞬間の彼らの喜びは読者の皆さまも想像に難くないであろう。また、この電球が何故かLEDなのも太陽光共々「エコ」である。

こうして社会的事業を行いながら、自分たちも豊かになっていきたいというのが、カンボジアのアントレプレナー達が一番に考えていること(言わば、利益を上げ続けることが彼らなりの存続のサステナビリティー)であり、この現実に対して、人間・社会・地球環境のサステナビリティーを重んじた企業活動をカンボジアに定着させてゆきたいというARUNの理念が、どう調和してゆけるか正に思案のしどころである。お互いが理解しあって、完ぺきではないけれども歩み寄ってゆける努力を辛抱強く続けることが重要だとつくづく思わされたスタディーツアーであった。

今回のスタディーツアーは、改めて社会的投資とは何か、我々の理念と現地とのギャップの存在、それを埋める努力こそ価値があることなのだと気づかせてくれる有意義な旅であった。

旅行行程をアレンジしてくださったARUNの高津さん、また、現地で行動を  共にしてくださった功能代表・土谷ディレクターさん、そして日本からの参加者の皆さま(毛利さん、長沼さん、矢野さん)に、この場をお借りして御礼を申し上げたい。

そして、我々の良きパートナーである、ARUNのカンボジア事務所のスタッフである、Mr.SovannaとMr.Ratheanyへの感謝を忘れてはいけない。両国の益々の発展とARUNの成功に期待したい。

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