【書評企画】未来予測から視野を広げるための1冊【第11回】

2052 - コピー

 

 ARUNパートナー 水野 司

 

社会的投資は、解決しなくてはならない社会課題が何かを明確にすることが重要であるが、本書では、今後地球規模でどんな社会課題が起こりうるのかを考える多くのヒントがあり、視野を広げる手助けになるだろう。

 

2052 今後40年のグローバル予測』    

ヨルゲン・ランダース (著)  野中香方子 (翻訳)

 

未来予測書を読む目的は、将来起こりうることに備えるためや、ビジネスチャンスを見出すためであるが、奇をてらったものはどうせ当たらないし、抽象的で当たり障りのないものも読む必要もなく、かつ本書の40年先のような長期のものは数字を積み上げても、前提の置き方やちょっとした数字の積み上げの仕方の違いなどで大きく変わるため、なおさら読む必要性を感じないものが多い。

ただし、本書は目的を十分に達成できる良書と言える。
理由は3つ。
・40年という長期でありながらも、全体的な趨勢や傾向についての予測のバランス感が素晴らしい。
・ 各分野の専門家による多くの予測を掲載し(各専門家の取り上げるテーマが多岐に渡っており面白い!)、著者の予測との共通点・相違点を示すことで、論点の整理が進む。
・ 適度に悲観的な見方で統一されており、危機意識を持って本書に接することができる。

興味深いのは、2052年までの人口と消費、エネルギーとCO₂事情、食糧事情は、地球の収容能力を超えるオーバーシュートの状態が深刻化するが、今から将来を見据えた政策によって、理屈上は解決可能であるものの、実際には解決することはないとしている点である。
将来を見据えた政策というものは、たいてい明日のために今日を犠牲にすることを求めることであり、短期的視野に立つ有権者が力を持つ民主主義社会や、短期的な利益を追求する投資家が支配する自由市場において、そうした政策を遂行することは難しい。今の行動が長期的にどんな影響を及ぼすかについてはほとんど考えていない。

一方で、資本主義が今後40年間、変わらずに存続するとは考えていないと述べている。全体の幸福が個人の利益よりも優先されるシステムである修正資本主義が台頭し、投資の流れを決めるのが利益だけではなくなるということ、企業が財務実績だけでなく自社の活動の環境や社会への影響を報告しなければならなくなることが起こるとしている。
これは社会的投資の考え方と同様であり、社会が追い詰められることによって、このような投資の考え方が一般的になることが期待できる。
そして、その社会が目指すのが、「化石燃料による経済成長」ではなく、「持続可能な幸福」へと転換し、物質的な豊かさだけではなく、人間の幸福に焦点が当てられるようになる「脱成長社会」への転換が進むとしている。

著者は、事態は改善しないと予測するので、その備えとして個人がよりよく生きていくための20のアドバイスを挙げている点が面白い。主なものは以下の通り。
・収入より満足に目を向ける
・ あなたの生活水準を脅かす持続不可能性について知ろう
・ 成長がよいことだという考えから脱却する
・ 相応の義務以上のことをしよう。将来後ろめたい思いをしなくて済むように
・ 現在の持続不可能性の中にビジネスの可能性を探ろう

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