【書評企画】社会起業家に必要な資質を知るための1冊【第9回】

20141105shohyou09

 

 ARUNパートナー A. Morita

 

「社会起業家とは?」「ソーシャルインパクトとは?」「世界にはこんな社会起業家がいますよ」、という内容の本や話は見聞きしたことがあったものの、「社会起業家に必要な資質は何か?」という観点の話はこれまで聞いた事がなく(また自分で特に考えたこともなく)、面白そうだと思い本書を手に取ってみた。

 

社会起業家の条件 ソーシャルビジネス・リーダーシップ』    

マーク・アルビオン(著) 斎藤 槙 / 赤羽 誠 (翻訳)

 

本書は会社の設立の仕方とか、投資家からの資金調達の方法といった、起業や組織運営のテクニカルなスキルを扱ったものではない。本書の原題は  ” True to Yourself: Leading a Values-Based Business ” で、ビジネスを通して自分の価値観や社会的な目標を実現させる、あるいは収益と社会貢献を両立させるためにはどのような事に注意して日々行動すべきなのかという、個人としてのソフトスキルやリーダーシップにフォーカスした内容になっている。

著者の Mark Albion は元ビジネススクールの教授で、1987 年に米国で設立された、Social Venture Network ( SVN ) ( 注1 ) に創設期の頃から携わり、また、ソーシャルインパクトに興味のある学生のネットワーク団体  Net Impact  ( 注2 ) の創設者。本書は、著書が SVN の仲間と共に行った 75 人の社会起業家(営利企業、非営利企業の両方を含む)へのインタビューと著者自身の経験を元に、社会起業型リーダーに必要な3つの特性と5つの具体的実践法についてまとめたもので、「月曜の朝にオフィスでまず何をするかという実践ガイド」を謳っている。

内容の詳細は実際に本書を手に取ってみて頂ければと思うが、「自分の価値観をどう事業と行動に結びつけるか」、「組織のメンバーを育てる成長促進力」、「会社の枠を超えたソーシャルコラボレーションの重要性」といったテーマごとに、豊富な成功と失敗の具体例が社会起業家のインタビューコメントと共に挙げられ、読みやすい構成になっている。また、「社会起業家に最も多い間違いは、人の解雇に手間取ること」、「組織へのコミットメントは、社会を良くすることを目的とした組織では簡単に見えるかもしれないが、しかしそのような組織では資金調達や社員の燃え尽きなどの問題を抱えていることが多い」といったなるほどと思う指摘もちりばめられている。一方で、「会社の成長に合わせ、どのように権限を委譲しているか?」「気づかいのあるスマートコミュニケーション」など、本書の大部分は、社会的企業や起業全般に限らず、一般のビジネスや組織運営にも十分当てはまる内容になっている。

本書が取り上げている社会起業家の実例は米国(あるいは先進国)に限られており、ARUN の投資先のような発展途上国の事例は出てこない。しかしながら、本書を読んでみて、「社会的企業とは何か」「社会的投資とは何か」を考えるためのきっかけや題材は世の中の至るところに存在していると感じた(日本よりアメリカの方が、こういった分野のすそ野が広いからという事もあるのかもしれないが)。それはあなたの今の仕事や所属する組織においても見つかるかもしれないし、逆に本書の内容があなたの仕事や活動に関して与えてくれる気づきも多いのではないかと思う。

私も含め、この書評を読んでくださっている方の中で自分自身が社会起業家になろうと考えている人は多くないだろうが、「あなたが社会起業家ならどうするか?」という視点を通じて、本書は ARUN の活動だけでなく、自分の価値観や社会的目標を仕事や社外活動を通じて実現させたいと考えている全ての人に有益な内容ではないかと思う。

 

(注1) Social Venture Network

http://svn.org/

(注2) Net Impact

https://netimpact.org/

 

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