米倉誠一郎「ソーシャルビジネスの視点からみた社会的投資」(下)

yonekura2013

2014年7月15日に開催したNPO法人ARUN Seed設立記念セミナーの事前参考講演として、米倉誠一郎先生の「ソーシャルビジネスの視点からみた社会的投資」(2013年2月7日「ARUN 創立3周年シンポジウム」)というメッセージを部分的に紹介していましたが-そして7月15日のお話は下記と全く違うエピソード満載で、会場が沸きに沸いたのでした-下記、全文をあらためてご紹介します。

■いまなぜソーシャルイノベーションが必要なのか

社会的投資が必要なのかをマクロな視点から話していきたい。
今の日本は1000兆の借金を抱えている、この状況を10年以上放置してきた結果だ。若い世代には申し訳ない。
この数十年の間に、世界では「小さな政府」が拡大してきた。英国サッチャー政権と米国レーガン政権などの、大きな政府から小さな政府へ移行することで、もっと効率的に社会的保障を運営することができると期待されてきた。 こうした小さな政府論によって世界は一瞬明るくなった。
しかし、グローバリゼーションが進展する中で、今度は世界経済全体が「世界同時不況」という状況に陥った。そこでは各国がケイジアン的な財政出動を始めることになってしまい、結果的に各国が多額の財政赤字を抱えることとなってしまったのが現在の状況だ。

こうした各国政府の財政状況が悪化するなか、ソーシャルビジネスなどの目的に応じた企業形態の必要性が説かれるようになってきた。 つまりソーシャルビジネスとは、政府が担えない公的な役割をいかにビジネスが担っていくということなのだ。
これを最初に体現したのがグラミン銀行のユヌスさん。今は政府と対立してしまっているが、それは彼がずっと政府を批判してきたため。政府がいくらお金を使っても解決できなかった貧困の問題に対して、30ドル程の少額融資が大きなインパクトを生み出すことを証明した。同時に、ビジネスとしても大成功している。
現在では800万人に1兆円を融資している。20%近い金利は日本ではサラ金じゃないかとも思えるが、貧困地域でのビジネスとして大成功しているからノーベル賞を獲得したんです。
このように、これまで税金で負担していた公共的な課題を解決するのがソーシャルビジネスであり、そこに生まれるイノベーションがソーシャルイノベーションなのだ。ユヌスさんは最近では利益の再投資をソーシャルビジネスとして定義している。

■イノベーションについて
日本の新聞は今でもイノベーション=技術革新だと考えている。ある企業でイノベーション研究センターを立ち上げた時にも、片仮名はまずいから技術革新研究センターにしようという人がいた。
しかし、イノベーションは技術革新ではない。
イノベーションとはプロセスだ。
例えば、全米各150の都市全てに翌日宅配するシステムを作るには、貨物機は何機必要だろうか。普通に考えれば、150×149=約2万3000機と答えるかもしれない。しかし、正解は149機。 それぞれの都市で貨物を収集したら、夜中の12時までにメンフィスに空輸し、そこで各自の都市宛ての荷物を積み込んで帰ればいい。
米国イエール大学の学生のフレデリック・スミス氏は、3年生の経済学のクラスで提出したこのハブ&スポーク理論のレポートを元に、フェデラルエクスプレス社を立ち上げた。このアイデアは技術革新ではないが「プロセスのイノベーション」そのものである。 こうしたFEDEXの戦略同様、韓国がハブ戦略を採用し、驚異的な成長を遂げている。
日本はハブを取ることの重要性が分かっていない。韓国は現在多くの国とFTAを結ぶことで、世界のハブとなろうとしている。
国内に目を向けると埼玉のイーグルバスの事例が面白い。これまで多くの人はなぜバス停がそこにあるのかを考えてこなかった。昔からそこにあるから。……でも今は違う理由があるべきじゃないか? そこで、このイーグルバスはバス運営を受託し、バス停の位置を変えて、ハブとなるバスステーションを創った。まさしく韓国のハブ戦略と一緒。これによって1時間に一台しかこなかったバスが15分に一台来るようになった。

■ベンチャー投資について
なぜ人々は宝くじを買うのか。
一枚300万円だったら誰も買わないだろう。これはLow Entry Riskという考え方に基づいていて、額が少額だからこそ、多くのリスクマネーが集まる。 米国ではERISA法の制定などを通じて機関投資家のお金がリスクマネーに流れるようになっていった。2兆4千億円のリスクマネーができたらすごいことだ。
その後1980年にナスダックが生まれ、多様なエグジットが可能となった。 投資がもしダメでも、それは出資者と投資先お互いのせい。でもそうした場を作ることで優秀な人材が集まる。このような仕組みをソーシャルインベストメントに作らないといけない。
ソーシャルビジネスでリターンを上げることは本当に難しい。しかし、難しい難しいと寝言をっている場合じゃないですね。例え2%でも経済的なリターンがあれば、それはゆうちょの200倍になるわけだ。是非、それくらいのものを作ってほしい。

以上で私からの提言を終わります。

 

2019年10月
« 2月    
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031  

follow us in feedly