【書評企画】社会的投資を知るための1冊【第7回】

Dead Aid

 ARUNパートナー Kitaru Ueda

本書は劇薬である。

「援助は腐敗を助長させ、人々を貧困に陥れる。アフリカが貧しいのはまさに援助のせいだ」と言い切る著者は、ザンビア出身、ハーバードで修士号、オックスフォードで博士号をとり、世銀に2年、ゴールドマン・サックスで8年勤めた経験を持つ、女性エコノミスト。

(中略)筆者の説を肯定するかどうかはともかく、手っ取り早く欧米での援助の論争の内容を知りたいむきにはお勧めできる知的読み物。

援助じゃアフリカは発展しない」ダンビサ・モヨ著(東洋経済新報社)

いきなりAmazonによる内容紹介の引用から始めてしまいましたが、私自身は本書をここで言われているような「劇薬」だとは思いませんでした。例えば、経済開放以後、投資が経済を牽引し、その結果何億人もの人々が絶対的貧困層から抜け出した中国の例を考えると、援助より投資の重要性を訴える著者の意見は、非常にまっとうなものとして感じられるのです。

著者の意見は、ARUNが成功させようとしている社会的投資の考え方とも調和するものだと思います。ARUNでは、途上国で社会的インパクトの大きな事業を起こそうとする起業家に対し、「寄付」ではなく「投資」を通じて彼らのビジネスの発展を支援し、ひいてはその国の社会問題の解決に貢献しようと活動しています。こうした社会的投資が素晴らしいのは、投資したお金が返ってくることにより再投資が可能になるという循環もさることながら、お金を返さなくてはいけないという緊張感が、現地起業家の責任感と意欲を刺激し、現地の人の成長に繋がるからだと私は考えています。

これに対し、返済を必要としない無償援助や、超長期で超低利子の融資(世銀の融資やJICAのODA等)は途上国の成長にとって有害な結果をもたらすと本書の著者は考えており、以下のように強く批判しています。

援助があると、腐敗が腐敗を助長し、国家は簡単に援助の悪循環に陥る。外国援助は腐敗政府にてこ入れする

つまり、彼らに自由に使える現金を支給するのだ。これら腐敗した政府は、法体制、透明性のある市民組織の設立、市民的自由の保護を妨げ、内外からの投資を魅力の無いものにしてしまう。不透明で投資が少ないので経済成長は低下し、このことは雇用機会を減少させて貧困をますます拡大する。貧困の増大に応じて、ドナーたちはさらなる援助を与えるが、このことがますます貧困を増大させる。

途上国であるというだけで先進国からタダでお金がもらえるとしたら、国内の税収や海外投資家からの直接投資を増やそうとする意欲は著しく落ちるばかりか、援助という利権で儲けようとする権力者が出現するのは当然の事でしょう。

では援助に代わるアフリカの資金調達方法として、どのようなものがあるでしょうか。著者は以下の4つの代替案を提示しています。

1. 国際的な債券市場へアクセスすること
2. 中国によるインフラ投資を積極的に受け入れること
3. 世界の農産物の貿易を自由化し、アフリカが一次産品の輸出から得る利益を増やすこと
4. 金融仲介活動を促進し、貧しい人でも借り入れができるようにしたり、国外の移民からの送金受け入れを増やすこと

著者は4.の例として、マイクロファイナンスを挙げています。マイクロファイナンスは、貸倒率が低く、貸出金利も大企業向け融資に比べれば格段に高いため、十分に儲かるビジネスであり、実際に世界中で拡大しています。それ自体は素晴らしいことなのですが、一方で、マイクロファイナンスが対象とするような個人商店ではイノベーションや大規模な雇用が生まれづらいのが課題かと思います。

一方で、日本にあるような大企業が少ない途上国では、中小企業(英語ではSMEと言います)こそが経済成長のエンジンであり、雇用の担い手であるというふうに思われます。しかしながら、途上国の現地銀行は資本不足等の理由から一部の安全な借り手(大企業等)にばかり貸付をし、裏付けとなる資産の無い中小企業には、例え経営者が優秀だったとしても、貸し渋る例が多いようです。つまり、途上国の中小企業は、マイクロファイナンスの対象である個人と、銀行の対象である大企業との間に挟まれて、非常に苦しい資金調達環境にいるのです。

こうした中小企業のニーズにこたえるのがARUNの役割だと私は考えています。

本書では社会的投資やSMEファイナンスに割かれたページは決して多くありません。ですが、マイクロファイナンスに加え、ARUNが実践する社会的投資/中小企業向け金融が途上国開発の現場において見過ごせない力を持っていると考えるに足るだけの内容があった、そう私は読みました。

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