パートナーズエッセイ 「挑戦者たち」を支える仕組みづくりをリードする福岡市とARUN

福岡城跡からの市内西部の眺望

Partner 黒田孝伸

 

■“創業特区”福岡市

筆者が現在居住している福岡市は、日本の政令都市の中で、人口増加率が第1位で、昨年150万人を越え、また人口に占める若者比率、開業率、起業者総数に占める若者の比率もそれぞれ第1位です。英国の情報誌では「世界で最も住みやすい都市ランキング」の第10位に位置し、東アジア主要都市やアムステルダム等とも直行便で結ばれ、日本における国際会議の開催頻度は東京23区に次ぐ第2位であり、観光、ビジネス、留学を目的として海外から多くの人々が集う都市です。少子高齢化が急速に進展する日本において、どこかアジア・アフリカの新興国にも似た躍動感を感じさせる場所という印象です。

昨年9月、内閣府は「成長戦略」を推進すべく、「国家戦略特区」の案を公募しましたが、今年3月末、福岡市が提案した「新たな起業と雇用を生み出すグローバル・スタートアップ国家戦略特区」が高く評価され、福岡市は「国家戦略特区」の一つに選定されました。福岡市は既に2000年より創業者支援に取り組んでいますが、今回選定された理由としては、特に2011年以降、コンテンツ産業の起業に対して積極的な支援を行った結果、既に50社以上のコンテンツ産業が福岡市に拠点を新設し、来年10月には「LINE」が本社機能を福岡に移すことを決定するなど、コンテンツ産業の集積で実績を上げていること、2012年には「スタートアップ都市」を宣言し、国内外のベンチャー企業と地元企業のマッチングや産学官の協力体制を構築してきたこと、が挙げられています。

今後、福岡市は、“創業特区”として、起業を望む若者と既存企業とのマッチング、起業手続きの簡略化、起業への融資制度の拡充といった施策を進めるとともに、起業する外国人の在留資格の要件緩和や起業後5年間の法人税減税といった特例措置の導入を検討することにより、「起業家」として新たに挑戦する人々を支える仕組みづくりをリードしていくことになります。福岡市における雇用拡大の効果としては、2018年度には年間の新規雇用者数を現在よりも5万人多い20万人にまで増加させることが目標とされています。

http://www.city.fukuoka.lg.jp/startup/index.html

■アフリカ・アジアの「挑戦者たち」

2006年、アメリカン大学経済学部ジョージ・アイッティー教授(ガーナ人)は著作「Africa Unchained: The Blueprint to Africas Future」の中で、「チーター世代(Cheetah Generation)」に言及しました。「チーター世代」とは、チーターのようなスピードで変革を推進する若手のアフリカ人です。欧米留学後、欧米諸国に留まりキャリアを積んできたものの、アフリカの開発に貢献すべく、母国に帰り、汚職疑惑が蔓延する古い世代の政治家に反発し、より民主的で透明性の高い国づくりに向けて影響力を及ぼす一方、貧困や若者の失業といった社会問題に対しては、海外や自国政府からの援助には頼らず、ビジネスアプローチを通して解決することを目指す社会起業家としての性格を有する「挑戦者たち」です。

現在、ARUNが支援しているカンボジアやインドの社会起業家もアフリカの「チーター世代」と同じ新思考を有する「挑戦者たち」であると感じています。知識も経験も情熱も有する「チーター世代」が最も必要としているのは、ビジネスを始めるための2.5万ドル~10万ドル規模の資金ということですが、これはARUNが提供できる資金規模と同レベルです。筆者は他のARUNパートナーの方々と同じように、海外からの援助に依存せず、社会的課題の解決を目指し、ビジネスの分野でリーダーシップを発揮している彼らの新思考の中に、今後アジア・アフリカが健全かつ持続可能な開発を実現していく上での大きな潜在的可能性を見出しています。

■“Change Agent” としての福岡市とARUN

取り組みの舞台や支援の対象は異なるものの、福岡市とARUNには、「挑戦者たち」を支える仕組みづくりをリードし、彼らの潜在的能力を最大限に引き出す役割を果たそうとしている点で、“Change Agent(変革の担い手)”としての共通の熱意を感じます。筆者は、今後福岡市が地元や国内の「挑戦者たち」とアジア・アフリカの「挑戦者たち」を繋ぎ、新たな価値と雇用の創出を後押ししていくことに大いに期待しています。

そして、ARUNにも、カンボジア・インドの共感できる「挑戦者たち」を資金提供及び能力強化の両面において、より力強く支え続けてほしい、そして筆者もARUNパートナーのひとりとして小さくても、彼らの価値ある挑戦をしっかりと受け止め、しっかりと見届けるひとつの力になりたい、と考えているところです。

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